夏とB氏と太陽と 3
誰でも、他人のかさぶたを見ると嬉々としてグリグリといじり、人の額から血が流れ落ちるのを見て
「ワハハ、血ぃ出てるよ血ぃ!」と大笑いする知人を持っていると思います。
今回はそんな僕の友人、B氏のハナシをお聞きください。
第三話 『俺とB氏とイタリアと』
これは数年前、B氏と一緒にイタリアに行った時のハナシです。(結果的にそうなった)
この旅行はパックのツアーという平凡な旅行で、ツアーらしく集団で観光して集団で飯を食う
といった僕的にはあまり面白みの無い旅行でした。 しかし、せっかく来たんだから楽しもうと思い、
昼食時に同じツアーの女の子と、どこが良かった、何が美味しかったという話で盛り上がってました。
ところがB氏は一向に話に加わろうとしません。だんまりです。
昼食が終わり、解散した後B氏がちょっとムカついた顔で僕に話し掛けてきました。
僕は心の中で「俺一人で女の子と話してたから怒ってんのかなぁ。あーやっぱり無理にでもB氏を
会話に加わらせたほうが良かったのかなぁ…」と思ってると、
「俺のパスタ少ししかなくてスゲームカつく! クソッ!マジで頭来る。
同じ金払ってんのに不公平だ。俺が多い分には何の問題も無いんだけど」
さすがB氏、発想が常に僕の上を行ってます。(ちなみにこれは未だに文句を言ってます。
いつもなら過去の事など微塵もこだわらない男らしい記憶力を持つB氏ですが(←かなり婉曲な表現)、
よほどムカついたんでしょう。ちなみに「獄長が『俺のパスタ分けてあげるよ』とか言い出すの待ってたのによぉ!」
とヤクザ級の因縁をつけられたのもここに記しておきます)
そして帰国する時にB氏は空港でお土産を買おうとしました。 ヴェネツィアングラス。
小さいグラスが5、6万する代物です。(もちろんもっと高いのもある)
店員のイタリア女がどうしても売りたいらしく、かなりしつこくB氏に売り込みます。
しかし僕もB氏もイタリア語など話せません。
「××××、×××」
「このグラス、厳重に包装して」
「×××、×××××?」
「厳重に」
当然あちらに日本語が通じるわけはありません。 せめて英語だったらなぁと僕が思っていると、
「Speak English」
とイタリア女から言ってきました。 なんだ英語大丈夫じゃんとちょっと安心。
言われたB氏は少し考えるとこう言いました。
「袋に入れて」
それから数時間後。 飛行機の中で機内食が出ました。白人のスチュワーデスさんが
一人一人に機内食を配ります。
「Would you like beef or chicken?」
おー、こちらに配慮してかどうかわかりませんが中学生英語です。 これなら僕にもわかります。
「チキンプリーズ」
と思いきり日本語で僕が言うと、にこやかな顔でトレイを差し出してくれました。さすがプロです。
当然隣に座っているB氏にも聞いてきます。
「beef or chicken?」
ところがB氏は僕に対して
「えっ、なんて?」
ビーフとチキンぐらいわかるだろーと思いましたが(後が恐いので)口に出さずに
「ビーフとチキンどっちがいいかって」
と通訳(←?)すると、彼は少し考えてこう言いました。
「肉で」
『俺とB氏とイタリアと』 終
追記 B氏は決して「日本語は世界どこでも通用する」などと考えていたわけではなく、
欧米人が日本に来日した際には日本語を話さないのに日本人が外国に渡った時には外国語を喋るという
今日の欧米諸国と日本のあり方に対し疑問を投げかけていたのではないでしょうか。
あるいは「異なる文化間の接触でも、意思を通わそうという気持ちさえあれば言語の違いなど
さしたる問題にならない」という考えを自ら体現したのだと思います。
(こんくらい書かないと僕が殴られるからね!)
追記その2
現時点でのB氏はこの時とは比べ物にならないくらい英語力がアップしています。
(0は何倍しても無限大だからね!)
追記その3
B氏が、スチュワーデスは日本語わからないだろうと思って僕に
「スッチーのケツさわれ!」などと大声で言った事も追記しておきます。
(スチュワーデスは日本語わからなくても、同じツアーの人は日本人だからね!)
この物語はフィクションです。実際の人物、事件などとは異なります。
(実はこの時は僕の方が「成田近くの旅館にサイフを忘れる」という
大ポカをやらかしたんだけどね!)
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